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2024

#168 青春ごっこ(矢澤盛和/4年)

「矢澤っ!!シュートを打った!!ゴォオオール!!!!」

お茶の間のテレビからは興奮した実況者の声が溢れ、現地では何万人もの観客が僕のゴールで声を上げ、スタジアムを揺らす。

翌朝のニュースでは、ビッグクラブでの僕の活躍が報道され、全国で僕の名前を知らない人はいない。

そんなことを小学生の頃よく妄想していた。

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ご挨拶が遅れました。
筑波大学蹴球部4年の矢澤盛和と申します。現在はTSCという3軍に位置するチームで選手活動を行っております。

まず最初に、日頃の筑波大学蹴球部へのご支援、ご声援に対し感謝申し上げます。

多くの偉大な先輩方が書き残されてきたこの部員ブログを私も執筆させていただけることになり、とても嬉しく思います。拙い文章ですが、最後まで読んでいただけると幸いです。

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恥ずかしながら、最初の導入部分で書いた内容は私が小学生の頃、実際に妄想していたものだ。
小学 1年生の頃に5つ上の兄の影響でサッカーを始め、世界的サッカー選手になるのが夢だった。

しかし、(もうお分かりかもしれないが)現在の私の実力ではプロサッカー選手になることはできないだろう。

時間、友人、食事 etc.この大学生活の中で色々なもの犠牲にしながらプロになるための努力をしてきたが、結局4年の夏になっても3軍という立ち位置は変わらなかった。3軍は2年生の頃から私が所属しているカテゴリーである。これだけ長く同じカテゴリーにいると、たくさんの仲間に先を越されていく。

「34人」

自分より下のカテゴリーだったのに2軍以上の切符を掴んだ選手の数である。

ただの屈辱でしかなかった。

3年次の社会人リーグでは、チーム内得点王をとった。シーズンが終わり、4年生もいなくなる。流石に2軍に上がることができるだろうと予想していた。親にもサッカーの調子について聞かれ、おそらく2軍に上がれるだろうという話をしていた。

迎えた2023年 1月9日。
ポンッ、とスマホの着信音がなりメンバー発表の連絡が届いた。
すぐに添付されたファイルを開き、必死に自分の名前を探した。
しかし、2軍のメンバーリストに自分の名前はなかった。
昨年一緒に戦った選手のほとんどが、2軍に昇格し、自分は4,5,6軍から上がってきた選手の名前の中に埋もれていた。

プチッ、、

4年間の中で何度も切れかけた夢への糸。
それでも信じてみようと結び直してきた夢への糸。
とても頼りなく、存在しているのかいないのかもよくわからない夢への糸がここで完全に切れた音がした。

父親から電話が掛かってきた。
父「カテゴリーはどうなった?」
私「まだ発表されていないよ。」
嘘をついた。
期待して筑波大学へ送り出してくれた両親に申し訳なくて、すぐに現実を伝えることができなかった。

夢を諦めてしまった僕に蹴球部にいる意味はあるのか。サッカーを続ける意味はあるのか。

プレシーズン中そんなことを考えた。

練習試合の帰り道、僕は運転席で助手席に 1年生の頃からお互いに夢を語り、励まし合ってきた友人(ガーナと日本のハーフ、ここではクワビと呼ぶようにする)を乗せて、二人で帰る際にふと言葉がこぼれてしまった。

「俺、もうプロ諦めるわ」


少し沈黙が続いた。


クワビが喋る。
「そうか」

その後の会話はあまり覚えていない。

しかし、曲が流れていた。その曲の歌詞を少し乗せたいと思う。
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青春ごっこを今も続けながら旅の途中
ヘッドライトの光は手前しか照らさない
真っ暗な道を走る
胸を高ぶらせ走る
目的地はないんだ 帰り道も忘れたよ
壊れたいわけじゃないし
壊したいものもない
だからといって全てに満足してるわけがない
夢の中で暮らしてる 夢の中で生きていく
心の中の漂流者
明日はどこにある?
生きていてよかった
生きていてよかった
生きていてよかった
そんな夜を探してる

フラワーカンパニーズ「深夜高速」
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大学生にもなってサッカーを本気でやってるなんて、自分は馬鹿だなぁって思うこともあった。

この頑張りの先に何があるのかなんて、分かるはずもなかった。でも、もう引き戻せないところまで来てしまった。

週末の試合で点を決めると気持ちが良かった。
自分の目指したレベルで活躍しているわけではないけど、自分の放ったボールがゴールに吸い込まれるあの瞬間はとても爽快で、その後3時間は生きている心地がする。

自分のゴールでスタジアムを轟かせることはできないかもしれない。僕のことに興味を持っている人など存在しないかもしれない。

でも、あの生きた心地のする最高の週末をチーム全員で味わうために、全力を注ぐと決めた。

TSCの今シーズンは残り2ヶ月もない。
この2ヶ月で蹴球部に、TSCに、後輩に何を残せるかはわからない。

それでも、カッコ悪くても、サッカー人生の最後に生きてきた証を、15年間僕の人生を彩ってきてくれたサッカーで何か残すために全力で取り組んでいこうと思う。

筑波大学蹴球部

体育専門学群 4年

矢澤盛和


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